【中東危機の真実】 世界情勢アナリスト・高島康司氏に聞く

中東危機の真実 

▼はじめに

日矛

皆さん、こんにちは。

今回も素晴らしいゲストをお呼びしています。
世界情勢アナリストの高島康司さんです。
ヤスさん、よろしくお願いします。

高島康司

よろしくお願いします。

日矛

初めての方もいらっしゃると思いますので、簡単に自己紹介の方、お願いしてよろしい でしょうか。

高島康司

はい。
高島康司と申します。別名「ヤス」と呼ばれています。

あまりYouTubeなどでは活躍してないんですけれども、メルマガであるとか雑誌の記事であるとか、あとはセミナーが多いですね。

それからをいっぱい書いています。
今40冊ぐらい書いていますね。大体世界情勢の分析に関する本ですね。

セミナーは、ビジネス団体というか経営者の集まりだとか、そういう経済団体でのセミナーが多いですね。

日矛

今回ヤスさんをお呼びしたのは、世の中がどういう動きをしているかということを知りたい時に、世界情勢についてのスペシャリストとして、どうしても欠くことができない存在だと思ったからです。

今回は、中東情勢が非常に緊迫した状態になっておりますので、この件についていろいろと伺っていきたいと思います。

中東情勢に関して、おそらく我々は西側諸国側ですから、メディアを通じた情報をそのまま受け取るということでしかこの情報を知り得ないわけですよね。
もちろんYouTubeもありますが、それもおそらくいろんな情報が混在している状態だと思うんですよね。

それで実際のところどうなのか、それからそれに対して我々はどういう風に動くべきなのか、というところも含めて色々とお聞したいと思っています。

早速ですが、今イランとイスラエルが非常に緊迫した状態になっていますけれども、その辺のお話からお願いしていいですか。

▼イスラエルの暴走

高島康司

はい。

やはり今、イスラエルの攻撃というのが歯止めが効かなくなっているという感じなんですよね。

ちなみに7月31日ハマスのリーダーの1人に「ハニーヤ氏」という人がいますけれども、彼がイランを訪れていた時に暗殺されたんです。
それに対して、イランはすぐにその報復行動には出なかったんですね。

その後9月の終わりに、今度はレバノンのベイルートにあるヒズボラの幹部の拠点ですね、ここでナスララ氏をはじめ、ヒズボラの幹部たちが全員殺されました。

彼らはバンカーマスターという、地下まで届く巨大な爆弾を大量投下し、集中的に爆撃をしました。それでヒズボラの指導部が完全に壊滅したという状態だったんですね。

さらにその間にどういうことが起こっているかというと、ポケベルの爆弾爆発ですね。

ヒズボラは、スマホを持っているとGPS機能があるので、イスラエルにハッキングされて居場所が分かるということで、スマホを全部回収してポケベルに置き換えたんですよ。

そうしたら、そのポケベルがイスラエルの指令によって3000台ぐらい爆発をして、2700人ぐらいが怪我を負い、そのうち何人かが死亡したという事件がありました。

▼イランによるイスラエルへの報復

高島康司

ということで、イスラエルとイランとの間に非常に緊張が強まっていたんですが、それに対して10月1日イランがイスラエルに対して大きな報復攻撃をしました。

この報復攻撃というのは、180発以上の特に極超音速ミサイルを中心とした攻撃だったんですね。

そして日本のメディアや西側のメディアでは、その180発のミサイルのうち、イスラエルの迎撃システムのアイアンドームによってほとんどが迎撃され、その迎撃網を突破して何発かが着弾した、というぐらいで大きな被害は出なかったという感じの報道だったんですね。

でもこの報道って一言で言うと、ほとんど嘘っぱちに近い、現実を反映していないということがすぐに分かりました。

なぜかと言うと、地上で動画を撮っている人も多いんですね。そしてアメリカでは、その動画を分析する結構層の多い分析官の集団がいるんです。

例えばCIA の分析官だった人や、MITの、実はこのミサイルの開発に関与していたミサイル開発者、あとは米軍の元高官、このような人たちが退職者として膨大な数がいるので、彼らがプロの目から一気に分析するんですよ。

その結果何が分かったかというと、実はイランの言う通りだったんではないか、ということです。つまり、アイアンドームは迎撃に完全に失敗をしていて、迎撃がほとんどできてない、ということです。

それで、発射された極超音速ミサイルの80%ぐらいがイスラエルに着弾をしたんだ、というようなことを動画でも証明したんですね。

その結果どうなったかというと、イランが何を狙っていたのかということが分かったんですね。

民間施設は一切狙っていなかったし、イスラエルの人口密集地もやっぱり狙っていなかったんです。イスラエルの中部と南部にある、イスラエルの主要な空軍基地を狙ったんですよ。

その空軍基地が、かなり大きな被害が出たんです。

その空軍基地というのは、F 16とかまたF35といったような、イスラエルが主要な航空兵器として使っているもので、そういう飛行機が相当程度やられたということなんですね。

この爆撃のニュースが入ってから、マックス・ブルメンソールというかなり有名なアメリカ人のジャーナリストがいるんですけど、すぐにその現場に駆けつけたんですよ。どうなっているのかということで。そうしたら当然基地内に入れないし、近くに行くこともできないんですね。

ただやはり、巨大なクレーターがたくさんあいていたのは確認しています。なおかつその基地の近くに行くと、スマホのGPSが攪乱されるということも分かったんです。

それで攪乱されるとはどういうことかと言うと、自分はイスラエルの南部とか、中部の基地の前にいるんだけど、テルアビブにいるような感じのGPSの情報が出てくると言うんですね。

そのようにイスラエルは、GPSを攪乱することによって、外部の誰かが被害を発見することを抑えていることも分かりました。

▼中国の関与

高島康司

さらにもう1つなんですが、ポケベル攻撃があった直後に、実は中国軍が国連の平和維持部隊PKOとしてレバノン南部に滞在しているんですよ。340名ぐらいの部隊なんですけれども。

実はそのレバノンに滞在している中国軍の基地のすぐ近くに、イスラエルがミサイルを撃ち込んだんですね。

この理由なんですが・・・。

どうも本来爆発する予定のポケベルは、5万台だったようなんですね。それが妨害電波が発射されて、その妨害電波のおかげでポケベルの爆発のスイッチが全て無効化されたようなんです。

では、その妨害電波はどこから発射されたかというと・・・。

中国軍のPKO部隊の基地にあるアンテナからどうも防衛電波が発射されたようだ、というので、それに対する警告としてイスラエルがミサイルを撃ち込んできた、ということなんですね。

だから、中国は早いうちからレバノンに対する支援を表明していて背後で動いていた、というようなことも最近明らかになってきています。

▼イスラエルの報復の可能性

高島康司

そのように非常に緊迫した状態なので、イスラエルに相当程度の被害が出たことで、それに対してイスラエルがどういう報復をするかということを、みんなが固唾を飲んで見守っているんです。

そして昨日の段階で、ミドルイースト・モニターという今中東では相当名のあるメディアが、イスラエル政府の決定としてリークしたんですね。

それは、イランに対する全面攻撃を行う可能性がある、ということです。

その1つは、その対象となるのがイランの宗教指導者及びイラン政府の拠点であるということ。もう1つは、イランの石油関連施設、それからイランの核関連施設で、これらに対して一斉攻撃を行う可能性があるということです。
ただいつそれを行うかというその時期に関しては、「我々は今検討中だ。」ということを言ったんですね。

それが昨日の段階で出てきたニュースです。

それに対して、IR革命防衛隊という組織がありますが、これはイランの現在の宗教原理主義的な体制を守るための組織なんですね。そしてこの革命防衛隊のテレグラムチャンネルで発表したんですね。

「もしイスラエルが、我々の核関連施設、それから石油関連施設を攻撃するならば、当然我々は報復をする。ただその報復はイスラエルにとどまらない。それはバーレンであるとか、アラブ首長国連邦であるとか、クウェートであるとか、近隣の石油算出国を一斉に攻撃して、そういう国々の石油備蓄の基地や、石油生成施設などの石油関連施設をみんな攻撃してやる。」

という風に宣言したんですよ。

だからもし最悪の場合は、イスラエルの全面攻撃が行われ、それに対する報復として、今度はイランが周辺諸国の石油関連施設を全部やるということになってくると、原油価格の高頭が歯止めが利かなくなるのは目に見えているわけですよね。

現在1バーレル70ドルぐらいなんですが、 CIAの分析官とかそういう人たちの試算によると、本当にその攻撃が全部行われた場合、1バーレル240ドルぐらいに上昇してもおかしくない、という風に今言われています。

例えばG7を始めとした先進国で、それが1 バーレルどのぐらいの原油価格であれば耐えられるのか、経済が崩壊しないで耐えられるのか、という試算もあるんですね。

その試算が国によってバラバラなんです。
例えば日本であれば1バーレル160ドルまでは耐えられ、アメリカであれば1バーレル150ドルで耐えられるなど、国によってばらつきがあるんですが、大体150ドルから 160ドルの近辺なんですよ。

そうすると、240ドルなんてことになると、50年前の1973年から 74年まで続いた、いわゆる第1次オイルショックに匹敵するか、それを上回るくらいの大きなインパクトはありますね。

そうなるかどうかということが、早ければこの1週間ぐらいで分かってくるんですね。当然イスラエルがどう出るかによりますから。

現在我々はそういうギリギリのところにいる、ということですね。

それでイスラエルの出方によっては、イランがイスラエルに対して、やはりかなりの規模の報復をするでしょう。

イスラエルに対して例えば人口密集地にミサイルを打ち込むであるとか、イスラエルの軍事基地のかなりの部分がイランのミサイルでやられるというタイプの報復だとすれば、これはイスラエルを助けるために、アメリカが巻き込まれる可能性があります。

最悪の場合というのが実際起こるという可能性は、今のところまだ見えないんですけども、米軍の地上軍がイスラエル軍と一緒になって、イランに侵攻するなんてことでもあれば、まさにこれは第3次世界大戦の引き金にもなってくるということなんですよ。

だから、今1番危機が高まっているのは、ウクライナ戦争ではなく中東の方ですね。

日矛

ありがとうございます。

色々なお話を伺ったんですけど、いくつかピックアップすると・・・。

まずは、我々は先ほど申し上げた通り西側諸国の一員なんですけれども、テレビなどのメディアの報道がいわゆる大本営発表のようなものになっていて、現実と報道の内容の乖離が大きいということですね。

それはなぜかと考えた時に、きっとあくまでも「西側諸国として利するところの報道」ということなんですね。
それを隠すことの方が良しとするからそうなっているんですが、現実は違うという話ですね。

またイスラエルという国は、そもそも人口が990万人ぐらいで、軍事的には最新のものを持っているんですが、地方を敵に囲まれていて、彼らの心情からすればそういう動き、紛争に対して過敏にならざるえない状況になっているんですよね。

そうなった時に報復することがもう目に見えてわかるのに、なぜイランが何百発もミサイルを打ち込んだのか、というところが常識的に考えて少しクエスチョンなところがあるんです。

今のお話ですと、実際のところ空軍基地を狙ったということは、例えば最新鋭の戦闘機であるとか、そういうところを叩いたということで脅しなどではなく、実際もう戦争が始まっている状態だということですね。

そしてこのことが引き金になって・・・。

戦争とは大体そうだと思うんですが、お互いの利害関係が一致しないところで、報復の報復で突き進むのが戦争なんですね。

第一次世界大戦の時に、オーストリアの皇太子をセルビアの青年が暗殺した時、最初は ヨーロッパの新聞などではそれが1つの事件としてしか取り上げられなくて、実際に第一次世界大戦になるとは、誰も予測していなかったんですよね。

その二の舞を踏む可能性は十分ある
ということが、今のお話を伺っていて思いました。

また、石油の値段が上がると本当に他人事ではなくて、日本も非常に深刻な状況に陥るということですね。

▼従来は「落としどころに行きつく」というゲームのルールがあった

高島康司

だから結構今、危険な状態に置かれていますよね。

そして、なぜイランが報復をしたのかということなんですけれども・・・。

イスラエルとイランとの間、またイスラエルとヒズボラ、イスラエルとハマスの間もそうだったんですけれども、今までのゲームにはルールがあったんですね。

そのゲームのルールは何かというと、例えばイランが攻撃をしたり、またイスラエルが攻撃をしたりするような場合、大体勢力の均衡を保つようなところまで持っていくというような感じの報復だったんですよ。

例えば4月にイランがイスラエルにミサイルを打ち込むという報復があったんですね。

その時は3日前に、事前にイスラエルにもアメリカにも「我々はミサイルを打ち込むからね」と通告しているんですね。

そうするとアメリカ、それから当時出てきたのはサウジアラビアやアラブ首長国連邦などが、みんな連合を組んでミサイルの迎撃態勢を整えて、イランから警告通りに発射されたミサイルを一斉に迎撃できたんですね。

そして、イスラエルに対する被害がやはり最小というか、ほとんどないような状態にするんです。

これも実は、イランは計画しているわけですね。
一応国民に向けて、「我々は報復したぞ」ということをやはり表明をしたいということです
そうしないと、イランの宗教原理主義的な体制が維持できないからです。だからそういうことをやる。

でも、実際にイスラエルに大きな被害は与えたくないので事前に全部通告をする。そしてその通告に従ってイスラエルやそれを支援しているアメリカ、NATO諸国も同じような感じで反応する。

こういうゲームのルールだったんですよ。
でも今回はどういうことかというと・・・。

イランは報復をした。それなりにやはり被害が出てきたけれども、人的被害だけは回避をしたんですね。空軍基地を中心に攻撃をして、とにかく人口密集地ではやらず、民間人にとにかく被害が出ないように最大の注意を払っている。

それでイランは何を言っているかというと、「これで我々の報復は終わった。」と言ったんですね。これでゲームオーバーにしようと。これで勢力の均衡は保たれたよねと。

でも、もし今までのゲームであれば、イスラエルも例えばイランに報復をするにしても、核関連施設であるとか石油関連施設は一切狙わずに、イランがあまり使っていない軍事用レーダーであるとか、最近イランがあまり使っていない何か、どこかの小さい軍事施設などに1発2発ミサイルを打ち込んでいたんですね。

それで「我々が報復したんだ。」という体裁を整えて、裏でイランとイスラエルが合意をして、「ここで打ち止めにしようや。」という感じで、こういうゲームのルールで進行していたん ですよ。今までは。

イランは当然このゲームで進行するだろうと思っているわけですね。だから「我々はもうこれで報復しないからね。我々の攻撃は終わりだ。」と言ったんですね。

それに対してイスラエルは「分かった。」と言って、小さいターゲットに小さいミサイルを打ち込んで「じゃあこれでお互いに体面は保ったから、これで終わりにしようよ。」と言う。

イランは、そうした既存のゲームのルールの方向に持ち込もうとしたんですよ。

ただ今回のイスラエルは違うんですね。

10月7日以降ですね。イスラエルは極端に言うと、頭がおかしくなっているんです。歯止めが利かなくなっているんですよ。

今までのゲームのルールを全て無視して、ヒズボラにしろハマスにしろまたイランにしろ、敵という敵は全部軍事力で殲滅するんだというぐらいの、いけいけモードに入ってしまっている、ということですよね。

そういった状態なんですけれども、イランはイスラエルがそこまで戦線モードに入っている、というようなことを認識していなかったと思います。

日矛

今のお話を伺ってると、やはりこの4月のイランの攻撃というのはプロレスだったんですよねお互いに。

「今から打ちますよ!」ということで、迎撃の体制がしっかりと保てる状態で行ったわけだから、ほぼほぼ打ち落とせたんでしょうね。

だけどどうでしょう、今回のは?

もちろんイスラエルが今までの既存のルールを無視して動き出している、暴発しているというのはよく分かるんですけど、イランの方もどうですか?

今回の攻撃がもし予告なしで行ったのなら、ルール違反を少し犯していることになりますよね。

高島康司

今回、やはりイランも少し真剣になっていたところはあります。

ただ予告はしていたんですね。
ですが、イスラエルに対してではなく、周辺諸国に対して「我々は攻撃するからね」と予告はしていたんですよ。

それも3日前ではなくて直前の予告、という感じだったと思いますね。

日矛

八百長の状態で攻撃をした時の攻撃力と、予告なしで攻撃した時とでは、命中率や被害の度合などがおそらく違うと思うんですよね。

そういうところも、今回のイランとしては少し試しが入ったと言うか、新たな分析が加わったような気もするんですよね。

高島康司

4月の報復は、シリアのダマスカスにあるイラン大使館が、イスラエルによって攻撃をされたことに対する報復攻撃でした。

イランの勢力下にある武装勢力、例えばコッズ部隊などの武装勢力の司令官たちが殺害されたという事件に対する報復だったんです。

しかしその4月の報復の場合は、飛んできたのが極超音速ミサイルではないんですね。普通のミサイルと、あとドローンなんですよ。

ドローンなどというのは速度が遅いですから、簡単に迎撃されるんですね。そして他の極超音速ミサイルではないものも、やはり迎撃しやすいわけですね。だから「迎撃してくれよ!」みたいな感じで飛ばしたんですね。

ただ一方で、今回は極超音速ミサイルが中心なので、イスラエルに対してやはり一定の脅威を与える、自分たちがどういうことをやる能力があるのか、ということをあからさまに示すという目的があったと思います。

「これで我々の実力が分かっただろう。だから嫌だったらここで手打ちにしよう。」という感じのメッセージだったと思いますね。

▼敵対する勢力の指導者を除いても問題解決にはならない

日矛

私がすごく素朴な疑問なのが、イスラエルが、本当に自分たちの周りの脅威を取り払うための行動を起こしているんだとしたら・・・。

例えば、ヒズボラの指導者などを、ピンポイントに攻撃して殺害したわけなんですが、そういう攻撃の仕方というのは、もちろん短期的にはその指導者がいなくなるわけだから、指揮系統が全然ダメになるんでしょうけれども、長期的に見たら、象徴的な人が殺害されるわけだから、恨みが大きく電波して逆効果になるんじゃないかと思うんですが。

けれどもイスラエルはそういう考え方はしないんですね。

高島康司

アメリカの分析者たちが、やはり同じことを言っているんですね。

僕がここで言っている分析者とは誰かというと、シカゴ大学の国際政治学の世界的な権威者であるジョン・ミアシャイマーや、トランプ政権の時に国防省の顧問だったダグラス・マクレガー大佐、またはダニエル・デイビス中佐、元国連の核査察官だったスコット・リッターや、元CIAの分析官であるラリー・ジョンソンなど、錚々たる面々がいるんですね。

そして、彼らはみんな同じことを言っているわけですよ。

「ヒズボラの上層部、リーダーシップを壊したところで、ヒズボラがなくなるわけがない。まだ15万発から20万発のミサイルをそのまま持っていて、そのミサイルの攻撃能力は温存している。だからリーダーシップを潰しても、新しいリーダーなんてすぐ出てくる。イスラエルはそれを分からないのか。それからハマスを壊滅することも不可能だ。」と。

現在もやはりハマスは戦闘能力を持っていて、相当な数のイスラエル兵が殺害されたわけですよね。

「どんなにやっても、イスラエルがガザを占領したとしてもハマスがいなくなることはない。そして尚且つヒズボラがいなくなることはない。だから逆にどんどん恨みを拡大して、イスラエルに対する本攻撃が行われるための前提を今お前らが作っているだけだろう。イスラエルは、何というバカなことをしているんだ!」

というのが、大体その分析者たちの一致した結論なんですよ。

▼イスラエルの新たな戦略

高島康司

僕もやはりそう思います。ただイスラエルの側から見たらどういうことかと言うと・・・。

とにかくトランプ政権になるかもしれない。そうするとトランプは熱烈なイスラエル支持でもあるので、アメリカを巻き込んでやろうと思っているわけですね。

だからイスラエルは、アメリカをこの中東大戦争に巻き込むだけの力がある。そしてアメリカがイスラエルの救済にあの駆けつけなくてはならない状況を作り、中東のイスラエルに対する敵を全部殲滅してやるという、新しい戦略を立てた可能性があるということなんですね。

日矛

そういうことだったんですね。

イスラエルが最新兵器を持っていて、バックにアメリカがいるのはわかるんです。

でも、先ほどの人口的なものや周りの状況などを考えたら、彼らは長期戦に持ち込まれると、おそらく疲弊して難しい状態になると思うんですよね。

だからこそ短期決戦で片を付けるために、早めに大御所を引っ張り出そうという戦略が見えてきますね。

高島康司

そうです。基本的そうです。

アメリカはそれに引っ張りこまれないように、とにかく抵抗はしているんですけれども、ただイスラエルは引っ張り込めると思っているんですね。

▼新たな経済回廊の構想

高島康司

あともう1つは、これとはまた少し違った角度の情報なんですが・・・。

昨年の10月7日ですね。ガザ戦争が始まったのは。
ハマスがいきなり壁を超えイスラエルを攻撃して
ガザ戦争が始まり、イスラエルで1200人ぐらいの死亡者が出たんです。

けれども、あの戦争でイスラエルは彼らが攻撃するのを知らなかったのかと言うと、いろんな情報から見ると、どうもそうでもなさそうなんですね。

実は、モサドのエージェントがあの攻撃が行われる前に、あるインタビューに答えているんですよ。そして、「我々はハマスの戦闘員の携帯電話の位置情報を、全て持っている。」と言ったんですね。

だから、「我々はハマスの戦闘員1人1人の動きが全て分かっているので、ハマスは我々にとって脅威ではない。」とはっきり宣言していたんです。だったらハマスの動きなんて、すぐ掴めるわけじゃないですか。

それが2023年の9月に、国連総会ネタニヤフが面白い発言をしているんですね。

これはアメリカの提案もあるんですけれども、IMECという新しい経済回廊を作ろうという提案なんですよ。それはインドからサウジアラビア、そしてイスラエルまで行って、それからヨーロッパに抜けるという新しい経済回路なんですね。

なぜこれが経済回廊かと言うと・・・。
実はイスラエルは元々、エネルギーの自給ができない国だったんですけど、イスラエルのハイファという港の沖、東地中海に巨大な天然ガスが発見されたんですね。

これが発見されたのが2009年なんですけど、開発が進んで今2つの巨大な天然ガス田ができて、もう掘削が始まっているんですよ。

それでこのガス田というのは、実はガザ沖にあるんですね。だから、「そこから東地中海パイプラインを作ろう」というプランを、今持っているんです。

その東地中海、ちょうどガザ沖からパイプラインをヨーロッパまで繋ぎ、キプロスを経由してギリシャまで繋げ、それからギリシャから南ヨーロッパ経由でヨーロッパに天然ガスを供給しようというプランがあるんです。

そうすると、ヨーロッパは、ロシアの天然ガス供給にもう依存することはなくなるだろうということです。だからイスラエルがヨーロッパへの天然ガス供給の大動脈になるというプランなんですね。それが東地中海パイプラインです。

それと同時にもう1つ計画があるんです。
イスラエルを縦断する、ベングリオン運河という計画ですね。これはスエズ運河に代わるものです。

イスラエルが、スエズ運河に代わる、もう少し大きな航行も容易になるような運河を、東地中海から紅海まで縦断するようにして作る。この案もあるんですね。

そうすると、先ほど言ったIMECという経済回廊の中には、東地中海パイプライン、それからスエズ運河に代わるベングリオン運河が含まれているわけですよ。

そうするとベングリオン運河の起点になるのもガザなんですね。

日矛

それは、アカバ湾からガザの方に行くんですか?

高島康司

そうです。アカバ湾からガザの方ですね。

そうすると、ガザに人がいたら困るということになります。運河もそれからパイプラインも、やはりガザが中心点になるわけですね。

そうなると、イスラエルというのは、インドからヨーロッパまでの巨大な経済回廊、エネルギー回廊の1つの中心点になってくるんです。
そのようにしてイスラエルを大国化するということが、実はネタニヤフの願望で狙いなんですね。


それから見ると、「二国家並走案なんてとんでもない。とにかく、ガザに人がいてもらっては困る。」ということなんですよ。

だからそれから言うと、はっきりした証拠はないんですが、どうもこのプランを実現するために、ハマスに攻撃させたんではないかといったような、仮説も成り立つんですね。

アメリカの分析官の中では、そう信じているような人たちもすごく多いです。かなり怪しいと。

日矛

なるほど。

そういう遠大な計画が、全部このシナリオの中に入っているとしたら、今の行動というのがすごく納得いくところですよね。

高島康司

そうなんですよね。

日矛

強気に出ることができるのも、そこが1つあるんでしょうね。

そういう構図を描いているとしたら、周りからの自分の立ち位置がすごく上がるわけですから。

高島康司

はい。おっしゃる通りですね。

先ほど言ったIMECという経済回廊のプランは、バイデン政権が出してきたんですね。おそらくそうなんです。

ということもあって、「周りの敵を全て殲滅して、イスラエルを中東の大経済ハブにするというこの考えは、当然バイデンも支持するだろう。」という風に踏んでいる、ということだと思います。

日矛

そろそろ今回のまとめに入らせていただきます。

中東情勢というものは、我々が西側メディアを通して知る報道とは現実が少し違うかもしれない、ということがまずあるということですね。

そして、それぞれの戦争はそれぞれの国の利害の対立なので、利するところのもので動いていて、そういうところで報復の繰り返しが続いている、ということなんですね。

けれども1番懸念されるのは、その報復の繰り返しによって拡大して、大きな戦争になっていくということです。

それがひいては対岸の火事では済まされないところにいるのが、今の日本の状況だということも含めて、色んな話を伺いました。

なかなか興味深い話が尽きませんが、とにかく情報がすごいですね。

また今後もよろしくお願いします。
ありがとうございました。

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