イスラエル・イラン紛争の真相<世界情勢アナリスト・高島康司さんに聞く>

皆さん、こんにちは。
今回も、素敵なゲストをお呼びしています。
世界情勢アナリストの高島康司さんです。
ヤスさん、よろしくお願いします。



よろしくお願いします。



ヤスさんとはちょうど 1年前ぐらいに、講演会でご一緒させていただきました。あの時はアメリカの大統領選を控えた頃で、色々とそのあたりの世界情勢を伺っていったんですけれども・・・。
今回は、中東でただならぬ状況が今起きていますよね。
もちろん我々は、西側のメディアを通していろんなことを伝え聞いたりしているんですが、それはあくまでも西側サイドの情報なんですね。
もちろんYouTubeなどでたくさん、いろんな方が語っていらっしゃいますけれども、大局的な物の見方というものに、私はあまり出くわしたことがないんですね。
ですからこうしてヤスさんをお招きして、今実際に、中東で何が起きているのか?アメリカの関与は、どういう狙いがあるのか?それに対して我々日本人は、どういう風に向き合ったらいいのか?
そうしたお話を色々と伺っていきたいと思います。
よろしくお願いします。



はい、よろしくお願いします。



今日が6月24日なんですけれども・・・。
現時点では、最初にイスラエルがイランに対して空爆をして、イランがその応酬をした。そしてトランプ大統領が例のバンカーバスターで6 発ぐらい打ち込んで、その後停戦。というところまで来ているんですね。
停戦を合意するということを一方的に言ったのは、トランプ流の、おそらくトランプショーみたいなものだと思うんですが、実際のところはどうなんでしょうか?
●手打ちにする方向で動いている



やはり動きがすごく早くて、大体10分おきに全然違うことが起こっているんですよ。
それで今の状況だと、まず停戦合意があったということをトランプの方で、ソーシャルメディアで発表をしたんですね。
それからやはり10分おきにいろんなことがあるんですが、一番最近の出来事としては、まずイスラエルがテヘランに向けてミサイルを撃ったんですね。そしてさらにそれに応酬する形で、イランがテルアビブに向けてミサイルを撃ったんですよ。
そうしてお互いに撃ち合いをして、その後イスラエル政府がテルアビブ市民に対して、「もうこれが最後の攻撃だから、シェルターから出て行っていい」という声明を出したんですね。
そして実は、イラン政府もテヘラン市民に対して、「これが最後の攻撃だから、もう日常生活に戻っていい」という声明を出したんですよ。
ですからどうなるかはわからないんですが、お互いに最後の攻撃、撃ち合いをして、「これで手打ちにしよう」というような方向に、どうも今のところは動いているようですね。



報道などを見ていて少し感じることは、これはいわゆる八百長というかプロレスですよね。



はい、そうです。



イランは、カタールのアメリカ軍基地に報復をするということで、前もって予告して将兵などを退避させて、全部撃ち落としたという話がありますけれども、これは前例があったんですよね。
前にもイラクのアメリカ軍基地であった、ということでしたね。



ええ、そうです。



ですからこれは、表向きお互いのメンツを保つためにそういう撃ち合いをやっているんですが、実情とは全くかけ離れているという感じですね。
●イランを罠にかけた核交渉



そうですね。
基本的に今回の流れというのは、6月13日にご承知のように、イスラエルからイランに対する攻撃がいきなりあったんですね。
主に核関連施設に限定した攻撃だったんですけれども、それに至るまでが・・・。
トランプがまずイランと交渉をしていたんですね。それでその交渉がある意味で、イランを罠にかけたような感じだったんですね。
要するに最初の交渉条件というのは何かと言うと・・・。
イランは、核拡散防止条約という国際条約に署名しているんですよね。
核拡散防止条約に署名した場合、核兵器の開発は許されないんですが、代わりに核の平和利用は主権国家の権利として許されるんですね。
それで核兵器を開発していないということを証明するために、全ての核関連施設にIAEA国際原子力機構の核査察官が入って、365日24時間体制で監視する、というような状態なんですね。
つまりイランは核拡散防止条約に入っていますので、もう何年もその体制で監視下にあったんですね。ですから、イランが核兵器を開発していないということは、もう明々白々なんですよ。
それで今回の最初の交渉の内容というのは、核兵器さえ開発しなければ核の平和利用は許すから、「低濃度のウラン濃縮は許す」ということなんですね。
3.75%で大体原子力が動きますので、「核の平和利用のための低濃度の濃縮は許すので、核兵器を禁止するという案でどうだ」ということで、トランプの方が持ちかけたんですね。
そしてそれは実は、イスラエルも望んでいる案だったので、そこで合意する寸前だったんです。
その寸前のところで、トランプの方からちゃぶ台返しをしたんですね。
どんなことを言い出したかというと、「いや、核の平和利用もダメだ。やはり全ての核の開発ということを停止しなければならない」というようなことを言ったんですね。
それに対してイランが、「何で急にそういうことを言うんだ」ということで、反発をしたんですね。
それでその交渉をしている最中に 、イスラエルがいきなり攻撃を始めたという感じだったんです。
イランの方としては、「まだ交渉しているので、まさか攻撃はないだろう」と思っていたわけですね。
それをチャンスと捉えたイスラエルが、サプライズアタックをしたという感じだっ たんですね。
それが現在の流れです。
●イランの核関連施設を攻撃



それで、今回どのような形で和平交渉に至ったかと言うと・・・。
基本的にはイスラルは攻撃をしてみた。
「結構早期に、ナタンズとかイスタファンとかフォルドゥと言われている、イランの核関連施設を大体破壊し終わって、イランの核開発能力を削ぐことができる」という風に踏んで攻撃したんですね。
●イランによる想定外の報復攻撃



でも結果的に、「それは実現からほど遠い」ということが明らかになったんです。
さらに、イランの反撃が想定した以上に大きかったんですね。時間が経つに従ってイランの攻撃回数は減るんですが、1回の攻撃力がすごく大きくなるんです。
そしてイスラエルは、アイアンドームとかデービッドスリングとかアローと言われている、極めて優秀な防空システムを持つんですけれども、だんだんその防空システムの精度が弱まってきたような感じなんですね。
それで6月19日とか20日ぐらいの最近の段階になってきますと、イランが20発ぐらい撃つと、5発から6発ぐらい大体着弾するんですよ。
そしてその1回の着弾の破壊力が、例えば6月13日、14日の段階とは比べものにならないくらい大きいんですね。
●イスラエルによる情報統制



それで、イスラエルの方は29人が死んでいると言っているんですが、イランは400名以上が死んでいると言っているんですね。
イスラエルの方が29人しか死んでいないと言っているなは、イスラエルがやはり情報のかん口令を敷いて、一切出さないようにしているんですね。
例えばハイファとかテルアビブとか、大体大都市圏にミサイルが着弾しているので、高層マンションとかが破壊されているんです。
これが日本で報道されていないところですけれども、凄まじい状態になっていて、下手したら数100名から、場合によっては1000名を超えてもおかしくないというくらい、破壊力が結構大きかったんですね。
これはイスラエルの想定を超えていたらしいんです。
さらにイランは、防空システムでは破壊不可能な極長音速ミサイルを持っているんですね。
マッハ15とかマッハ11 とかで、これは防空システムで破壊することは不可能なんですよ。
そのような状態で、イスラエルも相当大きな被害を受けていて、なおかつ、イスラエルの防空システムのミサイルが底をついてきたんですね。
●イスラエルが戦争をする3つの目的



イスラエルが戦争をやる時は、目的がありますよね。必ずこれと、これと、これを実現するという目的が。
そしてイスラエルの目的は3つだったんですね。
第1は、まずイランの核開発能力を破壊すること。
それから第2の目的が、イランの体制転換をすること。政治指導者を交代させて、体制転換をするということです。
それから第3に、この1と2の前提となるように、イランに無条件降伏をさせること。
この3つの目的だったんです。
けれども簡単に言うと、「その全てが実行不可能である」ということがわかってきたんですね。
そうすると、どうやってもイランは核開発能力を失うことなく、このまま行くと逆に核兵器を作ってしまうことになる。そうして、イスラエルに対する脅威は逆に増してしまう。
では体制転換はどうなのかと言うと・・・。
体制転換どころではなくて、イラン国民が政府のもとに結集してしまった。
それで第3の無条件降伏ですが、これは初めからありえないということだったんですね。
●追い詰められたイスラエル



そうすると、イスラエルは追い詰められたような状態になるんです。大都市圏が相当程度やられて、経済はボロボロで。
そうして昨日までの段階で、何と言われていたかと言うと・・・。
「イスラエルは追い込まれているぞ。下手したら核兵器を使うか、和平を願い出るかしか選択肢がなくなっている」と、昨日の段階では言われていたんですね。
それでイギリスのアリスタ・クルックという、有名な元外交官で中東担当の人なんですが、その人からの情報で「もうそろそろ、イスラエルの方がどうもまいって、和平の仲介をトランプに申し出たようだ」というのが第一報として、昨日伝えられたんです。
イランの方は、「イスラエルがもし攻撃を停止するんだったら、いつでも和平をしていい」という状態だったんですね。それが昨日の段階です。
●B2爆撃機によるバンカーバスター



トランプは、そこまでイスラエルを引っ張っていくための、お膳立てをしたんですね。
どういうお膳立てだったかと言うと・・・。
まず、イスラエルの肩を持って一緒にイラン攻撃をしたんです。
イラン攻撃をした時に、B2という爆撃機に搭載したバンカーバスターという、地底深くまで到達すると言われている爆弾を14発落としたんですね。
B2爆撃機が7機で、1機に2つその爆弾が入っていますから、大体全部で14発を落としたんです。
●実際にはバンカーバスターは効果がなかった?



ただ、14発を落としてもフォルドゥの核施設は破壊不可能である、ということを事前に知っているわけですよ。
何故かと言うと、フォルドゥという施設は、地中80mから90mのところにあるんですね。そしてなおかつ山の中なんですけれども、その山が硬い岩盤層なんですよ。
だからおそらくかなり高い確率で、バンカーバスターでも到達できないだろう、と言われていたんですね。
それで攻撃をした後に、まずイラン政府の方から「自分たちは、ほとんど無傷だよ」と。そしてIAEAの方から「どうも放射線量が全く上がっていないので、核施設は無傷だろう」という声明が出てきたんです。
そしてその前にイランが、基地の中から重要な濃縮ウランなどを全部取り出して別の施設に持っていっているのも、やはり目撃されているわけですね。
ただそう言いながら、トランプは「イランの核開発能力が消滅した」と言ったんですね。何故消滅したと言ったのかというと、これは本当にパフォーマンスです。
イスラエルの方を信用させるパフォーマンスです。一緒に攻撃をしてくれたということで、イスラエルはやはりトランプ政権に対する信用度を深めたわけですね。深めたということは、イスラエルに対するかなり強い影響力を発揮することができたということです。
そのような条件を作った上で、イスラエルが「もうまいった。何とかしてくれ」と言ってきたので、トランプが動いたという感じなんですね。
でも実は、今回はやはり非常にうまく仕立てられたシナリオに乗っとったパフォーマンスだと思いますね。



表向きは和平交渉という形ですけれども、実際にはイスラエルの方がどうしようもない状態、もう動けない状態になっているということですね。
それでトランプが助け舟を出したみたいな感じで、しかもトランプ流のパフォーマンスなんですね。
一応影響はないとわかりつつ撃ち込んで、「ほら、やったぞ」みたいな感じを作り出したということですよね。



そうですね。
●空爆では限定的?



ヤスさんに伺いたいんですが、今のお話の中で、私の中でどうしても少し腑に落ちないことが一つあるんです。
イスラエルという国は、周りの中東勢力と色々とやり合っていますよね。例えばガザとか、旧アサド政権とか、ハマスとかもそうでしょうけれども。
それが大方片付いた後、一番親玉であるイランのところに攻撃するというのは、何となく感覚としてはわかるんですけれども・・・。
先ほどの狙いとして、例えば政権を転覆させるであるとか、無条件降伏であるとかいうことまで、もし視野に入れたとしたら、空爆ではどうしてもなしえない話ですよね。地上部隊などが行くのだったら、話は別ですけれども。
ですから、本当にそこまでの狙いであったのかどうか、というのが少し私の中でクエスチョンだったんですね。
●イランの核開発能力を危険視している



イスラエルが実際どういうような見通しを立てていたかというのは、不明な部分が多いんですよね。
ただやはり、イスラエルがイランの核開発能力を相当危険視していたのは事実です。核兵器は持っていないけれども、その能力をやはり危険視していたんですね。
これは僕の推察ですけれども、今回おそらくイスラエルといえども、今おっしゃったように、地上軍の導入がない限りイランの核開発能力を消滅させることはできない、ということを知っていたと思うんですよ。
●イスラエルの真の狙いはイラン軍関係者・核開発研究者の暗殺



では、本来の目的はどこにあったかと言うと・・・。
軍事指導者の暗殺ですね。
だから今回、革命防衛隊の幹部であるとか、軍の司令官クラスがやはり相当程度殺されたわけですね。彼らの居場所をピンポイントにミサイルで攻撃しているんです。
むしろ目的はそちらの方にあったのかなという感じはしますね。



そうでしょうね。
先ほどの核交渉の話は、第1 次トランプ政権の時ですか?



ええ。そうです。
●イランの核武装



ですよね。
その時に和平交渉のテーブルについて粛々とやっていたのが、いきなり約束を反故にされたということですね。
今後の話ですが、原子力の開発は寝た子を起こすではないですけれども、そういう風に相手からやられたら、それを当然学習しますからね。
今後の核開発が、おそらくもうそれこそ、本当に兵器に直結するようなところまでのビジョンを描かざるを得なくなってきているんじゃないか、逆効果が出てきているんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか?



ええ、そうです。
ですからこのまま行くと、イランの核武装をやはりどんどん促進させるんですよね。
今回のイスラエルの攻撃、それからトランプ政権の攻撃があってから、ブリックス及びグローバルサウスの国々がみんなイランの支援についているんですね。
例えば昨日だと、フィリピンのマニアラで、イランの支援デモをやっているわけですよ。
それでこれを放っておくと、やはり世界各地にそういうイランの支援の輪が広まってくるんですね。
そうすると北朝鮮とかパキスタンのような核保有国が、イランに核供与をするという可能性も十分あるわけですね。
当然やはりその背後にはロシアとか中国の支援があるということです。
放っておくとそういう風な方向に、戦争が長期化すればするほどなってしまうということですね。
だからどこかで、もう手打ちにせざるを得ないという状態であったのは、間違いないと思いますね。



そういう意味では政府の高官などを根絶やしにするという当初のイスラエルの目的は、ある程度達せられたかもしれないんですけれども・・・。
そもそもが原子力の開発が進んでいる国であるというところで、プルトニムにしてもウランの濃縮にしても、そういうものを潜在的に作る能力があるという潜在的抑止力というものを、少し甘く見ているところがあったんじゃないかなと思ったんですよ。



それはそうですね。



つまり、アメリカが最新の13トン級のバンカーバスターを撃ち込んで、それを世界に知らしめたということは、それを撃ち込まれた側も、今後どういう被害が起きるか分析ができるわけだから、ある意味手の内をさらしたみたいなところもおそらくあると思うんですよね。



そうですね。
●長期的に見て、今回の軍事行動はどうなのか?



そうすると、私が仮にイランの指導者だとしたら、今後の核開発の研究にあたってはさらに奥深く、影響がないところでするということも見え隠れしますよね。
一時的にしのげたとしても長期的な視野で見たら、むしろ和平の交渉ということに関しては逆効果だ、という風に思ったんですけれども、どうでしょうか?



そこら辺は、そうですね。
だから僕は全体的に見ると、イランの核武装を促進させたというやはり非常に大きなモーティブになったと思いますね。
そうするとやはり最終的には、核武装をしたイランとどうイスラエルが折り合いをつけるか、というイスラエルとアメリカ側の問題になってきますね。
今回まず、何故イスラエルがこんなに焦ったのかと言うと・・・。
実はIAEAの今の事務局長は、イスラエルの息のかかった人だと言われているんですね。
現在の事務局長の前は、天野之弥さんという日本人の方だったんですよ。その事務局長が突然死亡したんですね。突然具合が悪くなって亡くなって、その後に今のグロッシー氏になったんですね。
グロッシー氏という現在のアルゼンチン人なんですけれども、彼は事務局長の選挙に勝ってなったんですね。そして彼をおしているのは、実はイスラエルなんですよ。
それでIAEA のデータのほとんどが、イスラエルにも自動的に伝わるという感じなんですね。
それで今回どうだったかと言うと・・・。
IAEA がイランを査察しているデータが、やはりイスラエルにどんどん伝えられるわけです。そのイスラエルはAI大国でもあるんですね。
イスラエルが、どういうソフトウェアを使っているかと言うと・・・。
アメリカのパランティアという企業があるんですね。AIの特殊機能で影のGoogleと言われているくらいすごい企業なんですよ。そのCEOはピーター・ティールという人で、PayPalという支払いシステムを作った人でもあるんです。
●モザイクシステム



その彼が作ったパランティアというAI企業で作った、モザイクというシステムがあるんですね。
そのシステムは、いろんなデータを見てそのデータからAIが、「相手がどのような意図を最終的に持っているのか」「そして今そのような意図を持っていないけれども、将来そのような意図を持ちつつあるのか」といったことを予想するシステムなんですね。
それは、「誰がテロリストになりそうなのか」ということを予測するシステムとして作ったんですね。
普通に日常生活を送っていて、たまにイスラム原理主義のサイトに引っかかって見てしまったみたいな感じの人たち。そういう人たちをフォローして、彼らが5年後にテロリストになる可能性がどのくらいあるか、ということをちゃんと読み取って、その可能性が高いとなった時に、テロを行う前に暗殺してしまうという感じのシステムなんですね。
それで今回、このモザイクのシステムをIAEA からもらったイランのデータに適用したんです。これでAIがどのように結論したかと言うと、「これは将来的に必ず核兵器開発をする」という結論になったんですね。
その結論を見て、イスラエルが焦って攻撃をしたという感じなんですね。
ただ問題は・・・。
このパランティアの開発システムモザイクとあともう1つ、ラベンダーというシステムがあるんですね。
これはガザで、ハマスの戦闘員と民間人がごっちゃになっていますよね。それでラベンダーというのは、ハマスの戦闘員を見極めるための AI システムなんです。
ハマスか民間人かを見極めて、ラベンダーがハマスだと断定したら、もう殺害していいということになるんですね。
ただモザイクと同じベースのシステムなんですけれども、そのラベンダーのAI の認知度がかなり低いということはわかっているんですね。相当エラーが大きい。信用するに足らないということはわかっているんです。
そうすると、モザイクもやはりそうなんですよ。
ただ、そのようなモザイクのシステムを信用したが故に、将来的にイランは核兵器を開発するだろうという予測でやったという感じです。これが全体論です。



おそらくそういう裏があってのことというのは、今のお話を伺ってすごく腑に落ちましたね。そうでないと無作為的にただ攻撃、ということではないはずでしょうから。



ないですね。



つまり将来の不安の芽を、先回りして摘んでいくという動きをやっているということですね。



そうです。



我々日本人の、平和国家の感覚からは全然違うところに今、イスラエルという国や国民がいるということを含めて理解をしていかないと、到底そういうところまでの理解ができないということですね。
●イスラエルとアラブ諸国のメンタリティ



そうですね。
やはり何が一番大事かというと、国民のメンタリティですよね。
イスラエルがどういうメンタリティを持った国民の国かと言うと、あれはやはりホロコーストが作り上げた国なんですよ。
彼らの思いというのは、「自分たちはナチスドイツによって弾圧をされて、ホロコーストを経験した。その時に欧米は我々を助けなかった」ということなんですね。
最終的にはノルマンディ作戦と第二次世界大戦に勝利することによって、ナチスドイツを潰してくれたんですが・・・。
でもホロコーストが始まっている初期というのは、例えばドイツから逃れていったユダヤ人を受け入れなかったりしているんですね。
アメリカはやはり門とを閉ざして受け入れなかったとかね。そしてヨーロッパは逃げてくるユダヤ人をどんどん追い返したりしているんですね。
だからそのホロコーストに対して、実は何もしてくれなかったというすごい恨みみたいなものを持っています。
そしてなおかつ、自分たちをずっとこの2000年間、ユダヤ人として差別してきた、西洋文明に対する根本的な恨みと不信感があるんですね。
それが作り出した国なんですよ。
そうすると彼らから見ると、我々はイスラエルという地を失ったら、もう民族として消滅してしまう。だからどんな手を使っても、イスラエルだけは守る。
例えば他の国の要人を暗殺したり、普通は言語道断の手で例えばガザの市民を全部殺したり、そこまでやってでも自分たちは生き残るといったような、非常に極端なメンタリティがイスラエルのメンタリティですね。



なるほど。すごく真相を突いていきますね。
表向きは、「対アラブ諸国との対立」という風に見えているんですが、それはたまたま住んでいる周りの国々がアラブ諸国だったからそうであったに過ぎなくて、「全方向で自分たちのものを守る」という風な感覚で彼らはいる、ということなんでしょうね。



そうです。
それでアラブ諸国の方は、何でイスラエルに敵対しているかと言うと、特別ユダヤ人に対する差別というのは元々アラブの中にないんですよ。
オスマントルコが統治していた頃というのは、全体がマグレブと言われている地域ですから、そこにユダヤ人もアラブ人もペルシャア人もごたまぜで生きているわけですね。
そこで全然問題ないので、元々アラブの文化圏にユダヤ人差別という概念がないわけです。イスラムの中にもない。
じゃあ何でこのような敵対関係が始まったかと単純に言うと、パレスチナ問題ですね。
イランは要するに、パレスチナ人の人権ということをやはり代わりに主張してくれている。シリアも主張してくれている。イラクも昔は主張してくれていた。サダムフセインの時代はね。
それがパレスチナ問題というところで、アラブの国々が団結できるというプラットフォームにもなっていたということなんですね。
だからパレスチナ問題が解決すれば、アラブとイスラエルの問題はおそらく簡単に解決します。



最後に少し希望みたいな話が出てきたので、すごくありがたかったです。
彼らは何か特定の民族を恨んでいるというよりも、自分たちのホロコースト、虐げられた歴史に対しての思いがあって、今の国家が成り立っているということなんですね。
だからそこをちゃんと見据えた上で、今この世の中がどう動いているかということを見ていくことも大事かな、というのが今日思ったことです。



言ってみればこれは、僕が言うところの集合意識のメンタリティ同士のぶつかり合いで、これは消し去ることはできないんですよ。
それをプラットフォームにして政治も経済が動いているんだということだと思います。



わかりました。ありがとうございました。
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